入居者に請求できないのか?
私が不動産業をしていた時に知り合いのアパート大家さんから聞いた話なのですが、もしかしたら同じような経験をされたことのある大家さんもいらっしゃるではなないかと思いましたので書いていきます。
その大家さんのアパートには8年間住んでいた入居者さんがいました。結婚されるということで退去をすることになったそうですが、タバコを吸っていたせいで壁紙が真っ黄色だったそうです。
次の入居者のために壁紙の張り替えは必要で、大家さんとしては張り替え費用を全額その退去者に請求をしたいと考えていました。
その方が住む8年前に新品の壁紙に張り替えていますから、大家さんの心情としては当然かと思います。
結論として、いっさい請求しなかった(できなかった)とのことでした。
理由としては、壁紙の張り替え費用の請求については「経年劣化」を前提に考えるので、入居者には請求できないと、当時の不動産屋に言われたからだそうです。(国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)
このガイドラインによると、壁紙の減価償却期間は6年であり、6年経過すると壁紙の残存価格は1円となる。
新品の壁紙に張り替えて8年住んでいる間に6年経過しているので請求できたとしても1円となってしまうと言われて渋々納得したようです。
なんだか釈然としない結果ですよね。
入居者に請求できる項目が明確化
こんなトラブルが多発していたために、2020年4月の民法改正により「原状回復義務と収去義務等」の内容がより明確になりました。
民法改正で具体的な例が明記されたため、「原状回復すべきものかどうか」をより簡単に判断できるようになっています。
改正されたガイドラインには、借主の過失や故意で生じた汚れや破損などは借主の負担で原状回復する義務が発生すると書いてあります。
ポイント
【通常損耗や経年変化にならないもの】
・タバコのヤニや臭い
・水濡れや液体をこぼして放置したことによるカーペットのシミ
・清掃不足によるキッチンの油汚れやバス・トイレの汚れ
・壁に打ち付けた釘・ネギによるボードの張り替え
・子供の落書き
・ペットによる壁、柱の傷や臭い
・部屋の設備などを雑に扱ったための破損
こうした記載がされているため、ペットが付けた傷や子供の落書き、タバコによるヤニ汚れは借主が負担しないといけないとはっきりわかります。
ただし、国土交通省のガイドラインでは「原状回復は最小単位を基本とする」としています。壁紙は1平方メートル単位での張り替えとなります。
入居者からすれば、必要最低限の負担なので有難いのですが、大家さんからすれば「部分的」に張り替えされても、みっともないだけです。
結果的に、大家が壁紙全部を張り替え、退去者から頂いたお金をそこに充当するような形でリフォームする方もいるようです。
どれだけルールが明確化されても、貸す側の大家さんの費用負担というのはゼロにはなりません。
ですので、アパート経営は修繕費用というのも意識しておかないといけないと感じるのです。
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参考クロスクリアバリアコート:壁紙を張り替えず塗り替える!リフォーム業界の新技術
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